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ローグアライアンス
ソフト紹介
親記事: ローグアライアンス
タイトル: 暑苦しい話
日付: Sat Aug 25 23:51:41 2012
書いた人:ZL
<planetary_titan_sushiya@hotmail.com>
ロールプレイング・ゲームは、MSX2にとって最も相性の良かったゲームジャンルのひとつでした。
グリグリ画面を動かすのは苦手でも、うるさ方の鑑賞にもたえ得るキー・ビジュアルを表示するのに
十分なグラフィック性能があり、2スロットの仕様を徹底した成果として、エントリー機から入ったユー
ザーがどんどん拡張ドライブを揃えていくという、目に見える需要も後押しして、意外なほどに網羅的
な、充実のRPG群がリリースされるに至りました。
その一方で、「MSX2以降対応」という標準的なスペックには、恐らくあらゆるメーカーが苦慮したであ
ろう、いくつかのハードルが存在していました。
漢字ROMなし、FM音源なし、拡張ドライブ接続時のメモリ環境への対応必須、という制約がそれに
あたり、(私を含め)低価格MSX2機ユーザーの数の多さがいかに無視できない規模のものだったか
を如実に物語っていると思います。
そしてこれは個人的な意見ですが、この「足かせ」のついた動作環境が標準仕様として落ち着いた
ことによって、MSX2の移植RPGの世界はじつに実り豊かなものになった、と考えています。
たとえばもし「漢字ROM」がMSX2に標準装備されていて、もしその恩恵をゲームメーカーがためらうこ
となく受け取っていたとしたら・・・私が愛してやまない、幾つかのMSX2版RPGのスクリーンは、かなり
変わり果てた姿になっていたことでしょう。漢字ROMのせいではないので適切な例えとは言えないの
ですが、『サーク』と『サークII』の違いにおいて、いかに文字フォントが与える影響が大きいか、そして
どちらが好ましいのかを、力説したいのは私だけでしょうか?
もっといえば『ティル・ナ・ノーグ 禁断の塔』でシステムソフトが見せてくれた、デモ画面における漢字表
示とゲーム中のカナ表示を使い分ける心意気とMSXらしさへの理解、『アークス』のMSX2版に投入さ
れた漢字環境へのこだわりの奥に垣間見えた初期衝動としての小説志向、『ラプラスの魔』のオリジナ
リティあふれる、楽しく怖い作品性がそのままフォントに憑依したかのような妙味、そして、スタークラ
フト社の一見地味な仕事・・・・巧みにカナ文字に砕きながら原文の空気を損なわない文字詰め表示
の硬質感がささえる、イベントテキストのムード創出力・・・
それぞれベクトルは違いますが、「文字表示」がロールプレイング・ゲームにとっていかに大切なもの
か、画面の印象、ひいてはゲームソフトそのものの性格をいかに大きく左右する力を持っているのか
ということを、いま、ひしひしと感じていただきたいと願う、話のながい私です。
まあそういったような種々の困難を抱えながら、よくこれだけのタイトル群がMSX用にリリースされた
ものだと驚いてしまう今日このごろ。
それにしても『マイトアンドマジック』は本当にありがたかったですね。たまらないゲームだし、MSXシ
ーンに与えた影響も大きかったと思う。見事な移植度で発売され、MSXユーザーにも好評を博したこ
とで、勇気付けられたメーカーも多かったのではないでしょうか。
そんなM&Mの後、ほどなくしてリリースされたのが、この『ローグアライアンス』。
これが立派な「くわせもの」ソフトなのでありました。
まず外見から得られる感触は、相当な本格派です。8人までの編成ができ、プレイの最中に分割し
て進行することも可能なパーティーシステムや、M&Mに近い雰囲気のある魔法システムまわりと、
多彩なキャラクタークラス。
アドベンチャーとロールプレイングを混ぜ合わせたような各種コマンドやモードを駆使した探索イベント。
多くの一枚絵で構成された地上マップと、3D表示の本格的な地下迷宮がもたらす親しみやすい立
体感と実地感。
マウスオペレーションも可能で見た目にも意欲をそそられるようなインターフェイス。(しかし、ここは
男ならキーボードでしょう。すべての操作はキーボードで行えます。こういうところ最高です。ただし
Zキーの連打だけはとにかく要・注意(笑))
私がくわせものと呼ぶ理由は、上記から漂う大本命超本格RPGのイメージと実際の本作品の姿とで
は相当の開きがあり、プレイして肩すかしを食らったと感じる人も多いであろう・・と思うからです。
ストーリーに根本から「使命感」が欠落しています。あらまあ。プレイするうちに明らかになっていく
宿命とか、おそるべき背景とか、奴らにはホトホト困っているのですウッ・・とか、そういうのがない。
すき好んで冒険している連中がぼちぼち冒険に行き当たる話、といえばわりと正解なくらいの、この
ユルさ。(でも本当はそれくらいがプレイヤーの気持ちには近い・・という話はしません)
ゲームシステムは少々難があり、洗練には程遠い、まるでちょっと未完成のまま放置されているよ
うな雰囲気があります。アウトドア、ダンジョンともに、その場でアドベンチャーモードに移行すること
で、より細かい行動をとることが可能なのですが、キャンプでできることとアドベンチャーモードででき
ることが微妙にかぶっていて、なにかとモードを行き来させられることも多く、煩雑な感じに仕上がっ
ています。
そのくせ、アドベンチャーモードは実際かなり「これみよがし」な仕様で、やるべきこと、やらせてみた
いことがまる分かりになってたりする一方、その場に関係の無いコマンドへの応答はそっけないし、
結果的に本当に用がないという、システム的に深みに欠ける印象をうけます。
キャラクターシステムは本格的なのに、戦闘での苦労はゲームを通してみても数少なくて(成長を要
する2、3のハードルとプレイ初期の病気くらい?)、ストイックなパーティー編成でもない限り、攻略
のしがいのあるタイプのバトルではありません。もちろん、やられる時はやられますけどね。
このゲームがときに「難解だ」といわれるのは、ダンジョンのデザインが意欲的で、攻略にそれなりの
時間と手間を要するからなのだと思います。
地上では順調にレベルを上げ、さんざんあきるほど同じ場所を歩き回り、今日はこのくらいでいいかと
言う具合に町へ引き上げているパーティーも、いざ地下の探索となると、かなり勝手が違います。
このギャップをどう説明しようかと考えあぐねていたのですが、そうだ海底調査だ、と気がつきました。
海底探査機に乗り込んで、周囲の地形に気を配りながら、少しずつ進んでいかなくてはなりません。
投光機(ろうそく、魔法のランタンなど)がなくては話にならないし、乗組員の体力も維持できないと話
になりません。
そして必要になるのはみんなの食料。そうです。海底探査機も一緒になって食べているのではない
か?と疑われるほどの勢いで減る食料です。(所持金の大半は食費に消えてゆきます)
『ローグアライアンス』のマップはかなり奔放にデザインされており、大きさも基本的なシルエットすら
もバラバラです。座標情報も存在せず、マッピングはまさに「手探り」なものとなります。そして意外な
ほど巧みにデザインされているので、マッピングも、核心にたどり着くのにも難航します。
仕掛けられた罠や遭遇する敵にも少しずつ体力を削られ、海底の探索はこうして、何度か地上との間
を往復しながら、一進一退の様相を呈していきます。
マッピングは必須だと思いますが、それとは別に何かメモでもとっておかないと、間をおいて再開する
ときに何をしたらいいのか分からなくなる危険性もあります。
ダンジョン攻略に相応の集中力を必要とする反面、表面的なノリがゆるく、使命感もないため、プレイ
面でも、またモチベーションの面でも、本当に「さまよって」しまいやすいのがこのゲームの落とし穴な
のかもな、と思います。
で、そのうえで、このゲームを本当によくリリースしてくれたものだと、あらためて思うわけです。
この3枚組のディスク版ソフトは、その大半を地上各所の一枚絵のデータのために費やしています。
一見なんてことのない絵ばかりです。草木が繁っている、岩がゴロゴロしている、川べり、洞窟の前、
ぽつんと建つ寺院、傾斜のある砂地、古い石壁と丘陵。
まるで夏の昼下がりのだだっ広い庭。そこにそっと寄り添うかのようなBGM。
これをずっと遊んでいると、奔放なタッチで描かれたこれら地上の風景は、次第になじみ深い場所と
なり、絵の使い回しをしていないことの恩恵として表現することが可能となった、その場所その場所の
固有の空気感までもが感じられるようになってきます。
これは、とてもリッチなことの様に思います。
行く先々で少しずつ様相の違う、群生する自然の木々のむこうに、真っ青な空が広がっている。
少量の食料をポケットのなかで転がしながら、延々とあたりを行き来する・・・結構心地が良いんです。
「そうすると地上はユルくて、地下はキツいんだな?」と解釈されそうですが、それは私の説明不足。
全体的に、基本的に、構造的に、恒常的にユルい。それが『ローグアライアンス』の真骨頂です。
つらい海底調査の果てにクルーが見るものはたいてい、とんでもないみやげ話のたぐいです。
ストレスを高め、警戒心を高め、糸が張りつめた頃合いを見計らって、小イベントがワゴンにのってゴロ
ゴロゴロ・・とやってくる。
・・すれっからしのロールプレイングマニアへ向けた、このユルさ。すべてが計算ずくなのかといえば、
そんなことはないのでしょうけど、なんかこれがMSXで遊べることの意義は大きい。当時はブラウン管
テレビにRF接続していたために、画面いっぱいにレイアウトされたこのゲームの繊細なスクリーン表示
は少しゆがみ、はみ出し、字間がつぶれていて、プレイしづらかった記憶ばかりがあるんですが、今な
らそれなりに優良な環境で、このソフトを楽しむことができます。
地味なエンディングも優雅に迎えることができます。
このようなソフトをMSX2に遺してくれた、スタークラフト社に心からの感謝と敬意を表したいです。
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